web版 第21-02号(No67)

  大栗川に清流復活を

             大栗川に清流復活を  その6
           『大栗川の自浄作用と水質レベル』

 大栗川は、取り囲むように位置する多くの丘陵と谷戸から水を集め流れを作っています。昔から源流であった御殿峠や大塚山など、鑓水の丘陵と嫁入り谷戸など8つの谷戸から清流が流れ込んでいました。中山からは、西部台団地の東側にある白山神社付近と中山丘陵から流れ込む中山川(岩入り川とも言う)。殿ヶ谷戸を通る小川には、野猿峠や現南陽台・由木めぐみ野の丘陵から流れ込んでいました。
 この他に、平山城址公園・東京農工大学試験地・19住区を水源とする寺沢川。南大沢と小山内裏公園からの水を集めた大田川。長池公園から流れ出るせせらぎ通り(別所谷戸)の別所川。中央大学付近から流れ出て谷津入り(八つの谷戸の小川を集めたのでこの地名が付いた)を抜ける小川がありました。全部は紹介しきれませんが、これだけ沢山な谷戸の湧水があれば大栗川の水量はいつも豊富で、うなぎも棲めるほどの自然浄化をしながら流れる清流だった訳です。
 多摩川が目立って汚れ始めたのは昭和30年代後半だそうです。これは白黒テレビや洗濯機・冷蔵庫と言われた三種の神器が各家庭へ普及し始めた頃と一致します。この頃から合成洗剤や化学肥料・農薬の使用が増え、使い捨てのプラスチックも目立ってきました。  
多分、大規模な土地開発が丘陵や谷戸の森を無くして湧水量を低下させ、増えた住宅から無処理の生活水・排水を増加させたことです。大栗川全体では、多摩ニュータウン計画開始と共に流域の住民急増が始まり、併行して行われた大栗川三面張り改修がダメ押し的に水質悪化を加速させたからでしょう。
 もともと河川には植物や動物たちから生ずるものに対し自然の浄化作用はある訳ですが、「人間生活が排出する汚染」が自浄容量を超えたときには対応できません。また、合成洗剤や強い農薬へも浄化作用をしません。このように台所や洗濯・風呂場から出る生活排水が原因となって、住民増に比例し汚れ始めました。
 昭和50年代から平成15年位までの大栗川は、見るからに汚れている感じがし川の中へ入る気がしませんでした。5年前の生活排水のカスをいまだに含んでいるらしく、プーンと強いドブ臭さがありました。大雨時に急流があってもヘドロは全部流れ切らないようです。
 ここ7年ほど前から、御殿橋から大田平橋へかけ、年2回の水質調査のときに大栗川の水を汲み上げ素手で取り扱っていましたが、COD値(水質汚染の程度を示す数値)は下水道の完備が進むにつれて向上し、2年前から清流に近いレベルへ達しています。しかし、残念なことは、段差(堰止め)から流れ落ちたときに発生する水泡が中々消えないことです。これは自宅前道路に入った下水管を使わず、直接に生活水を雨水溝へ流している家庭がまだあるように思われます。
 大栗川の水質検査の結果は毎年発行される「八王子市環境白書・データ集」に載っています。また、同じものが市のホームページでもご覧いただけます。この中の2008年版データから抜粋し、次に紹介します。
 大栗川の調査地点は東中野橋(由木東小学校の南側)と、監視地点として大田川の峯ケ谷戸橋(大栗川との合流点に最も近い橋)の2箇所です。
大栗川の平成19年度検査結果をかいつまんで記しますと
 @「人の健康の保護に関する環境基準」(カドミウム・水銀・ベンゼンなど26項目を項目により年2〜6回の検査)については、八王子市の河川全部が適合しています。
 A「生活環境の保全に関する環境基準」(pH/水素イオン濃度・DO/溶存酸素・BOD/生物化学的酸素要求量・COD/化学的酸素要求量・大腸菌群数・亜鉛・銅・燐・アンモニアなど22項目を、項目によって年2〜12回の検査)を検査します。結果はpHが12回中11回が基準外、BODは12回中1回が基準外で、他の項目は基準内適合でした。
 具体的には、pH値(基準値6・5以上、8・5以下)は年平均9・1、最大10・0、最小8・4でアルカリ性、傾向は以前から継続しています。この傾向は他の浅川支流でも若干あるものの、浅川長沼橋下で年平均7・7ですから「何が原因か」を調べてみました。市・環境保全課の説明では、地上の植物が炭酸ガスを吸収し酸素を出すと同じように、日光を受けた藻が水中の炭酸ガスを吸収し酸素を放出することだそうです。水は溶けた炭酸ガスが無くなるほど酸性からアルカリ側へ移行します。このようにコンクリートに付いている藻の炭酸同化作用が原因で、三面コンクリート張りの場合にはこの傾向が強いそうで、平成15年のデータでは、他の河川と余り変わっていませんでした。その証しとして、大栗川のDO値(溶存酸素量の基準値5mg/l以上/mg/lの単位を以下省略)は年平均13・7と高いです。これは下水管の普及による水質向上でコンクリートに付着した藻の光合成が活発になったためです。
 BOD値は年平均2・0、最大3・5(基準値3・0以上)、最小0・9で、昨年は2回の基準値外がありました。
 COD値は年平均3・4、最大6・1、最小1・2でした。清流といわれる数値は3以下、汚れた川が8以上と言われていますから、もう少しで清流の範ちゅうに入ります。浅川中流域で2前後ですから、今後の向上はありそうです。
 大腸菌群数は、基準が5000MPN/100ml以下(以下の単位は省略)で、年平均3000、最大4900で12回が基準内適合でした。18年度は年平均15000、最大79000でしたからかなりの改善がありました。原因を推測するとこれも下水道普及が考えられ、市内各河川とも劇的な数値で向上しています。多摩市の数年前の話しですが乞田川で大腸菌群数が大きくオーバーしたため、調査の結果、下水管からの漏洩が発見され、これを修理し改善できたそうです。
 さて、以上に述べた大栗川の水質において、pH値が若干高いことが気にかかりますが、藻の食べ物が炭酸ガスでは防ぎようがありません。下流の多摩ニュータウン通りの新大栗橋でも数値は同じで魚類は沢山おります。このやや高いpH値魚や他の水生生物が棲息できるかということについては、東中野付近でドジョウ・ハヤ・ヤゴなどを若干量ながら捕獲できたことから、現状でもなんとか特定種類の魚類なら住めると考えます。
(次号完結)

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