web版 第23-1号(No90)

  野猿街道の今昔を描く

         「薬師堂前の繭玉焼き」 著者 橋本豊治
  
 一般にはどんど焼きと言われているが、この地方では養蚕農家が多く、多収穫を願って繭玉焼きと言っている。
 私の記憶ではマユ玉焼きとはっきり言うよりメーエ玉焼きと発音していたように思う。正月七日が過ぎると注連(しめ)飾りや門松等をお堂の前の旧道に積み重ね、十四日の夕方を楽しみに待ったものだった。
十四日には各家庭で米の粉で団子を作り、家によって飾り方が多少違ったが、私の家では山から黄楊(つげ)の木を切って来て(座敷に石臼を置き穴に差し)、枝に団子とみかんをつけて飾り、養蚕の成功を祈願したものだった。
     

                薬師堂前のどんど焼き
 子供達は小枝が、二又か三又に分かれた長い木を用意してもらい、小枝に団子を刺し薬師堂前へ集まった。世話役には講中長が当たり、頃合いを見計らって火をつける。燃え盛るのを待って一斉に焼き始める。上手に焼ければ良いが、小枝が燃えたりして団子が火中に落ちたりすると大変で大騒ぎになる。
 さて、この団子を交換して食べると風邪を引かないと言われていた。また、書初めの失敗作を火中に投げ入れ、それが燃えながら高く舞い上がると字が上手になると言われていたので、子供達は皆棒の先で放り上げたりした。
 今の薬師堂はトタン屋根で堂守り的に人が住んでいるが、昔は一段上の所にあり、一間の草葺きのお堂であった。『新編武蔵風土記稿』によると、大石定久の奥方の持仏堂で、自然石に和歌が彫ってあったとあるが、庭石の表面を捜したがそれはとうとう確認出来なかった。

      

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  古い由木への散歩道 その8

            栗本橋の名付け話 (広報部記)

 栗本橋と言うバス停があるのに、栗本橋がありません。60年位前の地図を見ると、大栗川は大きく蛇行していて、今の大田平橋の約200m東側にあるきねやの前あたりに架けられた栗本橋があり、その橋の先は大澤村へ行く細い山道でした。
 約200年前、徳川幕府が武蔵国を調査記録した「新編武蔵風土記稿」を読むと昔のことが分り現在と比較して楽しめます。
 この調査は徳川幕府が各村に命じ、地誌取調書を提出させた後、役人が現地に出向き調査・編纂したもので、復刻版が八王子市の中央図書館にあり誰でも閲覧できます。
 この風土(ふど)記稿の「上柚木村」から次のことを報告しています。
 栗元…昔、蔵郷(注1)の西に栗の木があり、実を結ぶ頃には鑓水川に落ちました。それ故、ここより下流は栗川と名付けられ、この場所を栗元と呼ぶようになった。
 鑓水川…川幅2間ほどで、水源は鑓水村にあり、約16町流れてから、栗元の付近で中山川と合流し、更に1町ばかり流れ下柚木村に達する。鑓水川と中山川を合流した地点(注2)からの下流を大栗川と呼ぶ。

 次に「民話・栗元の大松」を紹介します。
 
 鑓水川と中山川が合流する、上柚木村の栗元あたりは、大ぶりでつやのよい栗の産地だったそうじゃ。
 「栗元の大粒」といって、なかなか人気があった。甘みも品があり、口の中にうまさがひろがり、いくら食べても、味が落ちない。「あとをひく、うまさだ」といわれた。
 この栗は、うまいばかりでなく、毎年、 どっさりと実をつけた。とりきれんほどなったもんじゃから、秋のさかりには、川の中に「ポッチャン ポチャン」と、落ちたそうじゃ。
 「おや、また栗がおちる」。晩方など、里の家々に、栗のおちる音が聞こえた。
 どっさりなるもんじゃから、里の衆も、川に落ちるのを、もったいないとも、思わんようになっておったということじゃ。
 「川に落ちてながれるのも、ご供養のうちじゃ」なとといっておった。
 大栗川が、いくつもいくつも流れ・・・、いつのことからか、この川が、大栗川と呼ばれるようになったと・・。(おしまい)
 
 別の雑誌を読んでいたら、大栗川の名は真慈悲寺(注3)の庫裏のそばを流れていたので大庫裏川と呼んだが、いつのまにか大栗川という名に変わったという説があります。私は下柚木に住んで40年、栗が川にのポッチャン説を信じたいですね。さて、皆さんはどちらを信じますか?

注1…蔵郷という地図上の地名は、現在はありませんが、大田平橋の北側あたり(ひな鳥山等がある谷戸)の古い地名です。
注2…現在の「大栗川と中山川」の合流点は、由木街道の信号・中山入口(前田橋) のあたりです。
注3…真慈悲寺は平安末期から鎌倉初期、日野市百草地域にあった幻の丘陵寺院。

※編集後記
◆民話は史実にもとづいて書いてあるときもありますが、タヌキやムジナが出たりの話も多いです。大人が読むときは、昔からのいい伝えの一つと考えましょう。

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