web版 第23-9号(No98)

  古い由木への散歩道

            その12 乗合自動車あけぼの時代

 「大正・昭和初期―多摩を走ったバス」を八王子市在住・京王電鉄OBの清水正之氏が書かれました。この書籍から主に由木にまつわる部分を紹介します。  
 日本における乗合自動車の営業は、明治36年に大阪で開催された内国勧業博覧会で梅田駅と天王寺公園間を運転したのが最初だそうです。その後、この博覧会行き乗合自動車に刺激されて地方の企業家が各地で乗合自動車の計画を考えるようになりました。
  東京市では明治37年頃、須田〜上野〜浅草間の市街自動車計画があったが、試運転の際、運悪く事故を起こし計画倒れしたとか。大正に入って乗合自動車導入のきっかけとなったのは、京王電鉄による武蔵野の発展を見越した首都東京と織物の街・八王子(当時は神奈川県)を結ぶ、甲州街道沿いの京王線であった。
  この京王全線開通までの臨時措置(大正2年)として、土地買収などによる未通区間の新宿〜笹塚間及び調布〜府中間を乗合自動車運行で補ったのが、東京における最初のバス営業でした。その後、東京市のバスは急速に発展し、昭和初期には区内の乗合経営会社が約60社・車両数1千7百余を数え、乗合バスが盛況の時代を迎えた。
 八王子では、大正5年に市内の豊泉さんが営業許可を取り八王子駅から高尾山麓までを片道90銭で運行した。五日市地方は、明治34年に今熊山入口からトテ馬車(乗合)が八王子まで走っていたが、大正9年に石川自動車が中古のフォード・ライトバン1台を購入し、乗合バス営業が始まった。続いて、八王子が当時は神奈川県であり、同様に織物業が盛んだった津久井方面からは、大正15年に八木自動車商会が八王子までのバスを走らせた。( 詳しくは、ぜひ冒頭に紹介した清水正之氏著書をお読みください)

 由木乗合自動車 野猿峠を越えた心意気
  
  八王子市と野猿峠を越えた由木村を結ぶ乗合バスが通うようになったのは昭和4年のことで、由木村在住・石井善蔵さんの始めた「由木乗合」によるものだった。
  昭和の初め頃の由木村は、農業・養蚕・畜産などに恵まれた農村であったが、農家の副業として「むしろ作り」が盛んであった。野猿峠を南に下った中山で農業を営んで石井善蔵さんは、農業のかたわら、むしろの材料となるワラを周辺各地から買い集めたり、出来上がったむしろを問屋に届ける運送屋(馬力引き)もやっていました。八王子へ出ることの多い村人にとって、野猿峠を越えての往復は不便でもあり、大変苦痛でもあった。
  八王子へ出る足(乗り物)が欲しい・・・当時各地で走り出した乗合バスの開通は村人の切なる願いでした。 
  そんな村人の願いをかなえるべく、石井さんは一念発起、乗合事業を計画したのであった。事業免許をとるため東京の警視庁へお百度を踏み、その努力が実って待望の免許を手にすることができました。
  ・免許 昭和4年7月2日
  ・路線 起点=南多摩郡由木村下柚木  終点=八王子市旭町
  ・主要経路地 由井村北野→八王子市子安町→南町→横山町 
  ・延長 8・75km
車庫を猿丸(野猿峠)に設置し、待望のバスは発車した。区間は下柚木(由木小学校前)〜八王子郵便局前(今の横山町郵便局前/野猿街道の起点)であった。最初の頃は「石井自動車」と呼ばれたこともあったらしい。  
  資本金は9千百円。車両はフォードの幌型車1台で、料金は全線4区35銭で、一日9往復運転された。その後バス区間は横山町郵便局前から八王子駅北口まで延長されました。
picture  昭和8年1月、新たに「由木相原線」が免許された。由木村堀之内〜堺村相原間で、延長7・5kmであった。
  この頃には車両もフォード幌型1両(定員7名)、シボレー箱型2両(定員9名)となった。路線もその後、相原坂下から横浜線相原駅まで延長された。
  路線には北野天神・打越弁財天・鑓水道了堂・白山神社・豊川稲荷・永林寺・鎌田鳥山などと名所が多く、石井さんはそれら名所へのお客さん誘致にも努めた。一日の乗車数は平均百余人(昭和12年)で、八王子の祭礼とか八王子競馬開催日などには増発運転した。
  いつしか村の人々からは、バス事業を改めて見直され感謝されるようになったが、苦しい経営は依然続いていました。
  昭和14年、戦時色も一層濃厚となり、個人経営のバス事業者にとって、ガソリン、機材、労力などの手当てが値上がりし、厳しさは増すばかりであった。こうした時代の流れのなかで、由木乗合自動車(車両4両、営業キロ16・2km)は、鉄道・バスの一体運営を進めていた京王電気軌道株式会社(京王バス)と合併しました。
  自分のふる里に通じる由木街道(野猿街道)にバスを走らせた石井善蔵さんの心意気とその努力は、由木の人たちにいつまでも語りつがれていくことでしょう。


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