古い由木への散歩道 その19
(鑓水村の)百姓出陣
甲州勝沼の戦いに幕府軍を一蹴した板垣退助の率いる官軍が関東目指して進撃してくるとき、長い太平になれた腑抜けの直参武士は頼み甲斐なしとして、幕府は新撰組の例もあり、多摩の農民を起用して、その進入の阻止を企てた。そして鑓水村には二名の要員を差し出すよう名主宛てに達しが届いた。
そこで村役人はあれこれと頭をひねった末、彼ならと八木竹次郎、小泉里次郎を選んだ。両名は然るべき日までに、近藤勇の指揮下へ入るべく、隣村相原の七国峠集合を命ぜられた。
普段はすこぶる威勢のよかった両名も、押され気味の幕府軍としての出陣にはすっかり怖じ気づいて、村を出発したものの夜こっそりと舞い戻り、知り合いの土蔵の中で息を殺して戦争の終わるまで隠れていたという。幕末こぼれ話のひとつ。
参考;小冊子「ふるさとの板木」S46年