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古い由木への散歩道 その23


今昔の大栗川とさかな獲り ④

筌漁…筌漁は竹製の筌を川に仕掛けてウナギを捕るもので、筌は「ドウ」あるいは「ド」と呼ばれ、その一端には獲物が逃げないように返しがついている。
 この竹かご(ドウ)中にミミズや潰したカニを入れ、他端を紐で縛って川に仕掛ける。するとウナギが餌につられてドウに入り、返しに引っ掛かって出られなくなる。
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 川の土手のあちこちにウナギの穴が開いているので、夕方には穴をめぐって幾つものドウを仕掛ける。これを翌朝上げると中にウナギが入っていた。多いときでは五、六尾のウナギが掛かったものである。
 ドウにはウナギを捕るものより小型のドジョウドウもあり、これを田んぼの水口などに仕掛けてドジョウを捕った。
 大塚では、ウナギはたいていナガシバリの漁法で捕られ、ドウはもっぱらドジョウ捕りの用具であったという。
 注記…5年前にドウを大栗川の洗馬橋(由木東小学校付近)近くで仕掛けたら15㎝位のドジョウが3匹とザリガニ2匹が捕れました。ドウはNET通販でも買えます。
ウナギの穴釣り…ウナギを捕るにはアナヅリ(穴釣り)の漁法を用いることもあった。その方法は、太い木綿針をミミズに突き刺し、針の中央を糸で縛って先端をシノ(篠竹)の空洞に突っ込む。こうしてシノと糸を持ち、ウナギが潜む穴へ挿し入れる。
するとウナギがミミズに食いつき、その瞬間に針がシノから外れてウナギの口内にひ引っ掛かる。
 穴釣りは夏の漁法であり、かっては大人も子どもも昼休みを利用して穴釣りを楽しんだものである。
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カイボシとドクブチ…川ではカイボシ(掻い干し・掻い堀)やドクブチ(毒打ち)と称する漁も行われた。カイボシは、川の一部を泥で堰き止めて水をバケツなどで掻い出し、川底に残る魚を素手で捕る漁法である。ウナギやギバチなどが捕れた。
 ドクブチは、エゴノキの実の毒素を利用して魚を捕る漁法である。板木谷戸(鑓水地区)では年に一度の行事になっており、秋蚕のまゆ出しが済んで一段落すると皆が集まってドクブチを行なった。
 その方法は、浜街道沿いの川のカーブ地点に土嚢などを積んで流れを堰き止め、山から採取したエゴノキの実を潰して上流から投入する。すると毒素が水に溶けて魚が苦しがり、次々と浮き上がっては流れて堰に貯まる。フナ、コイ、ウナギ、ドジョウなど、川に生息するあらゆる魚が集まってくる。いずれも毒素で動きが麻痺した状態にあり、容易にすくい取ることができた。
 越野では、八月の夏休みに男子が集まって大栗川でドクブチを楽しんだ。この時期には山でエゴノキの実が採取できる。そこで、ざるを携えて山に入り、エゴノキの実を採って来て石の上で潰し、バケツ一杯位を用意する。その一方では、大栗川の上堰(かみぜき)付近に板を落として、さらに堰き止め、同時に流れをよそへ逃がして深い淀みを作っておく。こうして上流から潰したエゴノキの実を投入すると、毒素で麻痺した魚が淀みにどんどん浮いてくる。これを網や素手ですき上げた。ただし、ウナギは強いのでなかなか麻痺せず、捕るのに難儀したいう。
 ドクブチのほかには、川岸にバッテリーを据えてプラス極とマイナス極をつなぎ、水中に電気を流して魚を麻痺させる方法もあった。しかし、誤って自身が感電死する事故があり、以後駐在所の監視が厳しくなった。
ヒブリ漁…夜間の田んぼではヒブリ(火振り)漁が行われた。これは文字通り燃える火を振りながら、その明りで魚をおびき寄せ、突き具で瞬時に突く漁である。
 明りには手製のカンテラや松明(たいまつ)が用いられた。カンテラを作るには欠けた土瓶や急須を用意し、この中に芯となるボロを詰めて、ボロ布の端を注ぎ口から出し、石油か食用油を注ぐ。こうしてボロ布に点火すると、油の浸みたボロ布が燃えて明るくなった。また、松明にはヤニの多い部分の松や稲わらの束を燃やした。
 昔は人家が少なく、商店もなければ自動車が通ることもない。夜は完璧に暗闇である。そんな中、明りを灯して田んぼに行き、水面を照らすと、ドジョウやフナがたちまち明りのもとへ寄ってきた。特に、水の落とし口付近はその数が多い。また、田んぼ周りのテビと呼ばれる水路を照らすと、そこにはウナギがいた。獲物を見つけると、これを瞬時に突く突き具はブットオシとも呼ばれ、これはブリキ製の針を櫛状にハンダづけしたもので、市販もされていた。櫛目の細かいドジョウ用と粗いウナギ用があり、これらを竹の柄に縛りつけて使用した。また、ウナギ突きには自転車のスポークも利用され、これに柄をすげて手製の突き具とした。ドジョウやウナギを突くと、これをビクの縁でドンと叩いて中に落とした。
川魚の料理法…川魚のうち、ザッコ(雑魚)に類する小魚は、煮付けや天ぷらに調理された。ウナギはいったん水を張った半切りの桶に入れておき、これをさばいて蒲焼に調理した。背開きにしたものを短冊状に切り、醤油をつけながら炭火で焼いた。
 ナマズは身をぶつ切りにして煮付ける。白身の淡白な味である。また、ギバチも同様に調理されるが、これはナマズに比べてハラワタ(内臓)と骨が多い。
illustration ドジョウは、水を張った中で数日間泳がせ、泥を吐かせてから調理される。その方法は、たいてい丸のままの煮つけであるが、ときにはドジョウ汁と呼ばれる味噌汁にもされた。これは、グラグラと煮立った湯に生きたドジョウを投入し、味噌で味付けをしたものである。

引用…新八王子市民族調査報告書 第2集
「八王子市東部地域 由木の民族」

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