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古い由木への散歩道 その26


       由木のお雑煮

 正月に雑煮は付きものですが、その由来を知っていました?。
 雑煮は室町時代に書かれた書物に登場しましたが、「武家社会における儀礼料理説」では餅や野菜・乾燥食品などを一緒に煮込んだ野戦料理だったのではないかと考える説。江戸時代、尾張藩を中心とした東海諸藩では餅と菜を一緒に取り上げて食べる習わしで「名(=菜)を持ち(=餅)上げる」という縁起担ぎだったという。但しこの説は一部に残っているものの誤伝による俗説とか。
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 民俗学による説明では、古来において一日は夕方から始まるとする風習があり、元旦は大晦日の夕方から始まると考えられていました。大晦日の夕方、神仏に供えた餅や飯を日の出後に降ろし、具材を加えて煮たものが雑煮のルーツとされています。
 但し、雑煮の由来には諸説があり、定かではないのが本当のようです。

 次に雑煮の代表的な材料を紹介します。
*具材… 代表的な具材として、餅、豆腐類、いも類、鶏肉の切身・肉団子、青味(小松菜・ホウレン草)、彩りを添えるための色気(人参・蒲鉾・エビ)、香りに柚子、三つ葉などですが、地方によって地元特産の具材を加えた雑煮も多い。例えば、青のりをまぶして磯の香りをかもす千葉の東京湾寄り地区の雑煮。鰹節をたっぷりかけた静岡の雑煮。ワラビ・ゴボウ・サトイモなど山の幸をいれた山形の雑煮。関東の下総雑煮では角餅にゴボウ・人参・大根・里芋・蓮根などにミツバをあしらうそうです。
*ダシ… ダシの素材も地域によって様々であるが、昆布・鰹・煮干し・するめなどが主に使用されてます。
*汁…雑煮の汁も地域によって様々で、澄まし汁仕立てには、塩味・醤油味(薄口/濃口/白)が7割を占め、関東・中国・九州地方に多い。味噌仕立てには、麦・米味噌(白/赤/合せ)があり京都を中心に多い。島根県の小豆汁風の仕立ては珍しい。
*餅… 雑煮の餅は、汁へ入れる前に焼いて香ばしさを意図したものと関西・広島を除く中国地方は生のまま煮ている。また角餅ではなく丸餅を使うのは糸魚川静岡構造線の西側(愛知・岐阜・九州等を除く)に多い。
 由木の雑煮は「八王子市東部地域・由木の民族」に、次のように紹介されています。
 正月三が日の間は、雑煮を食べて新年を祝う。三が日は男が作るものと決まっていた。 
 東中野の田口壽夫さん宅では、「年男」と称して家の跡取りである長男が作る。長男が幼い場合は、家の主人が務める。
 鑓水の小泉茂さん宅では、三が日はオトコシ(男衆)が早起きして家族で食べるための雑煮を作る。年末にあらかじめ三が日分の材料を下茹でしておく。材料となるのは大根、里芋で肉は入れない。当日は材料を鍋に入れて煮て、それに四角い餅を焼いて加える。最後に醤油を入れて味付けする。椀の盛り付け、その上にナルトと茹でたホウレンソウを載せる。この頃では油揚げを入れている。なお、鑓水には、雑煮に鰹節をかける家もある。
 越野の細野初枝さん宅では、材料は大根と里芋のほかに、ニンジンを用いる。若水(元日の朝に始めて汲む水)を用いて煮て、焼いた四角の餅を最後に加え、少し煮てから椀に盛り付ける。肉は入れなかったが、近年では鶏肉を入れるようになったという。
 中山の加藤勝一さん宅では、三が日は女性が関わらない。かつては、女性はけがれているからだと説明していた。大晦日に雑煮に入れる材料の下拵(したごしら)えをする。大根・里芋・ニンジンを茹でておく。三が日には、餅を焼かずに入れて煮て、鰹節のだしを加え、最後に醤油で味付けをする。この頃では肉(注1)を入れるようになったが、神にお供えする雑煮には肉を入れない。
注1…肉には血が伴うため、神仏へお供えするものに用いない習わしがあります。
「八王子市西部地域・恩方の民族」から恩方地域の雑煮を調べてみました。
*若水汲みと火起こし… 家の主人か、後継ぎが年男となり、家族の中で一番先に起きて、若水と称して井戸から水を汲んだ。ヤカンに汲んで、その水を前日に作っておいた雑煮用の汁の中に少し加える。また、ヒジロ(囲炉裏の意)があった時は、年男が豆がらを使って火をつけた。その火で灯明をつけ、歳神さまと仏さまにその灯明を供える。
 なお、「正月は絶対に掃いてはいけない」といって、三が日は掃除を絶対にしない。拭くくらいにとどめる。正月七日も掃いてはいけないというが、三が日ほど強くいわない。
*雑煮… 元日には神仏に雑煮を供える。年男が餅(四角い)を焼き、それを椀に入れる。女が前日に里芋・大根・ニンジンを特別に作った箸を用いて煮たものを火にかけ、それを焼いた餅に汁ごとかける。鶏肉などの肉類は入れない。雑煮を供えるところは屋内のみで、歳神さま・疱瘡さま・ダイジングさん・仏さま・エビスさま・コウジン(荒神/かまどの神様)さま・床の間のほか、台所の以前臼神さまをまつっていたところである。
 歳神さまには、雑煮は二膳供える。エビスさまやコウジンさま、床の間には、餅は焼かずに生のまま椀に入れ、それに汁をかけて雑煮にする。なぜそうするかは、とくにいわれはない。神仏に供える雑煮には鰹節といったダシは加えない。供えた雑煮はその日のうちに下げ、翌日家族で食べる。
 三が日の朝には家族で焼いた餅を入れた雑煮を食べる。人が食べるときは鰹節を入れてもよい。こうした朝の支度はすべて男が行う。

 雑煮の作り方は地方によって異なりますが、由木と恩方ではあまり異なっていないようです。由木の中でも前述の地区で異なってはいないものの「雑煮は代々の家に伝わるものですが、代ごとに多少のアレンジがある」と思われます。私の実家は秋田市土崎港という土地で、雑煮は醤油味で、ダシは鶏肉・ゴボウのささがけ、具はネギ、餅は四角で焼いてから汁に入れるが、今では家内がアレンジしカマボコやナルトが加わっています。
 由木村の人口は、多摩ニュータウン開発前に比べ18倍(11万人強)の人口となりました。各地からの流入が多くなり、古くからこの地に住み由木の伝統雑煮を食べる家庭は少数派になりました。なお今の若い方々は正月のお雑煮やお節料理に拘ってないようです。
 
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